睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)とは

睡眠時無呼吸症候群のイメージ

睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、睡眠中に無呼吸の状態が繰り返し起こるもので、睡眠時1時間あたりで、10秒以上の呼吸停止もしくは低呼吸状態(換気量50%以下)が5回以上ある場合、SASと定義されています。成人男性の約3~7%、女性の約2~5%の方がSASであると言われ、男性では40歳~50歳代の患者様が約半数を占め、女性では閉経後に増加する傾向がみられます。

SASの症状

睡眠中、無呼吸の状態に陥ると、脳に供給される酸素が低下するため、脳は体を覚醒させて呼吸の再開を図ります。一定時間後に呼吸は再開しますが、その後また睡眠状態となり、再び無呼吸の状態に陥ります。この「睡眠→無呼吸→覚醒→睡眠」のサイクルが繰り返されることで睡眠の質が低下し、中途覚醒、夜間頻尿、起床時の頭痛などが引き起こされます。

患者様本人が睡眠中にSASの状態であることを自覚することは多くありませんが、日中に強い眠気に襲われることが頻繁に起こるようになります。すると仕事や学業に支障をきたすなど、様々な場面での集中力や作業効率の低下を招き、場合によっては居眠り運転事故や労働災害を引き起こす危険もあります。なるべく早期に治療すべき病気と言えるでしょう。

以下のような症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われますので、お早めにご受診ください。

ドクターイメージ
  • 家族にいびきがうるさいとの指摘を受けた
  • 寝てはいるが、あまり熟睡した感じがしない
  • 朝、起きた時に頭痛がする
  • 夜間に何度も目が覚めたり、トイレに行ったりする
  • 昼間(活動時)に強い眠気に襲われることがある
  • 記憶力が低下している気がする
  • 車を運転中や、信号待ちの時になどについ居眠りをしてハッとすることがある
  • ED
  • など

また眠っている間に低酸素状態を繰り返すSASを発症している方は、通常に比べ、脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)は約3.3倍、高血圧は約1.4~2.8倍、糖尿病は約1.6倍にまで発症リスクが上昇すると言われています。他にも狭心症・心筋梗塞、不整脈、脳卒中、糖尿病など循環器系の合併症を引き起こすリスクが高まると考えられています。

SASの原因

SASの発症原因によって、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS:Obstructive Sleep Apnea Syndrome)と中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS:Central Sleep Apnea Syndrome)の二つに分けられます。

SASの患者様の約9割は、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)であるとされています。これは喉近くの気道が何かしらの原因で塞がってしまうことで発症します。大きな原因の一つとして肥満があり、首の周囲に脂肪が多くつき、空気の通り道である上気道が狭くなることでOSASが引き起こされます。この他に、扁桃もしくは口蓋垂(喉ちんこ)の肥大、舌の肥大、鼻炎・鼻中隔弯曲など鼻の病気、顎がもともと小さいことなどもOSASの原因として挙げられています。

一方、中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)は、脳から呼吸指令が出なくなる呼吸中枢の機能異常によって起こるとされ、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害や心不全がきっかけとなると考えられています。気道は閉塞されておらず、したがって、基本的にはいびきなどの症状が出ることはありません。

SASの検査

問診等でSASが疑われた場合、まず簡易検査を行います。これは携帯型の装置を用い、ご自宅にて睡眠中の呼吸状態の状況を測定していただくものです。鼻の下にいびきの状態や空気の流れを感知するセンサーを付け、指に血液中の酸素濃度を測る機器を装着した状態で眠っていただき、睡眠中の呼吸状態や上気道の狭窄の有無を評価します。

さらに精密な検査が必要と判断した場合は、医療機関に入院した上で、口と鼻の空気の流れ、血液中の酸素濃度を測るセンサーを装着し測定するほか、脳波や心電図、眼球や胸の動き、睡眠中の姿勢やいびきの音などを調べます。また睡眠時無呼吸症候群は喉や鼻、舌の異常が原因の場合もあるため、X線検査やCT検査などの画像診断で器質的な異常の有無を調べることもあります。

SASの治療

睡眠時無呼吸症候群の治療イメージ

SASの原因が中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)である場合は、原因となる疾患の治療を優先的に行います。閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)が原因の場合は、睡眠中に気道が閉塞しないための治療法を行っていきます。治療法としては、「マウスピース装着」「経鼻的持続陽圧呼吸療法」「生活習慣の改善」「手術」などがあります。

「マウスピース装着」による治療は、症状が比較的軽い場合に行われます。これは、それぞれの患者様に合わせて専用のマウスピースを作成し、下あごが上あごよりも飛び出ている状態で固定して、気道の閉塞状態を改善するものです。

「経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP/Continuous Positive Airway Pressure)」は、SASの標準治療とされるもので、睡眠時に専用のマスクを装着し、鼻から気道に向けて一定の圧力をかけた空気を送り込んで、睡眠時に閉塞している気道を押し広げるものです。無呼吸や低呼吸の状態を改善し、鼻呼吸になることで、いびきや熟睡感がないといった症状の改善が期待できます。

「生活習慣の改善」は、肥満が原因の一つと考えられる患者様に対し、CPAPでの治療と並行して行います。食事療法や運動療法で減量を図り、症状の改善を目指します。

「手術」は、アデノイドや扁桃肥大、鼻中隔弯曲症などの器質的な異常が原因となっている場合に行われるもので、扁桃摘出術などがあります。また肥満などによって気道が狭くなっている場合、口蓋垂など喉の一部を切除する“口蓋垂軟口蓋咽頭形成術”が行われることもあります。

当院では、より精密な検査や画像診断、および手術による治療が必要と判断した場合はグループ内の専門医、または提携する医療機関をご紹介いたします。

禁煙外来とは

【禁煙外来一時中止のお知らせ】
現在禁煙治療薬の供給が滞っており、当院においても入荷が困難な状況になっております。
そのため、禁煙外来の受け入れを一時中止させていただきます。
再開の時期が決定しましたら、ホームページにて改めてお知らせいたします。
禁煙外来の受診をご検討されていた皆さまには大変ご迷惑をおかけしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
禁煙外来のイメージ

タバコは「百害あって一利なし」とも言われるほど、健康に対して様々な悪影響を及ぼします。肺がんをはじめとした各種のがん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺炎などの呼吸器の疾患、動脈硬化など心臓や脳などの血管に関わる循環器の疾患、糖尿病などの生活習慣病などの原因となり、さらには手術の後が治りにくかったり、不妊の原因になったりもします。

当院の禁煙外来では、各種の禁煙補助剤を使用した。保険適用による禁煙治療を行っています。本気で禁煙をしたいという患者様は、まず、当院にご来院いただき、ご相談ください。

保険適応条件について

禁煙外来では、以下の条件を満たすことで保険適用となります。

  1. 1) ニコチン依存症に関わるスクリーニングテスト(TDS:Tobacco Dependence Screener)で5点以上、ニコチン依存症と診断された方
  2. 2) 35歳以上の場合、ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の方
  3. 3) 直ちに禁煙したいと考えている方
  4. 4)「禁煙治療のための標準手続き所」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意した方

※健康保険を使った標準禁煙治療は、12週間で5回の通院によるプログラムで、飲み薬を使った治療に関しては、保険適用は1年に1回となります。

ニコチン依存症判定について

ニコチン依存症と判断するための指標として、TDS(Tobacco Dependence Screener)と呼ばれるスクリーニングテストがあります。これは全10問の質問で構成され、「はい」と答えると1点、「いいえ」と答えると0点で、5点以上が「ニコチン依存症」と診断されます。

すでに禁煙をはじめた方は、禁煙前の状態でお答えください。

ドクターイメージ
(※)禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抗うつなどの症状が出現している状態。
設問内容 はい いいえ
問1 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?
問2 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?
問3 禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか?
問4 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか? (イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
問5 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?
問6 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?
問7 タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
問8 タバコのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?
問9 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか?
問10 タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?
合計

なお、このチェックシートは、あくまで目安であり、疾患の診断に代わるものではありません。チェックの結果、5点未満だったとしても、不安や気になることがあれば、まずは禁煙外来をご受診ください。 最終的なニコチン依存症の診断は医師が行います。また健康保険等の適用可能かどうかにつきましても、医師にご確認ください。

禁煙治療の流れについて

禁煙ができない理由として、ニコチンへの依存とタバコへの精神的依存の2つがあります。

ニコチンへの依存ということでは、タバコに含まれるニコチンが、脳内のドーパミン作動神経のバランスを崩してしまうことに原因があります。その結果、タバコを吸わないとドーパミンが低下し、イライラするようになります。こうした症状に対し、禁煙補助薬を用いた治療を行います。

使用する薬としては、内服薬としてバレニクリン(商品名チャンピックス)というものがあります。これは脳のニコチン受容体に結合し、ニコチンが切れた状態によるイライラを抑制する効果があり、さらにタバコを吸ってニコチンが入っても、ドーパミンの放出が抑制され、満足感が得られない状態になることで、喫煙への欲求を低減させます。使用に際しての禁忌や副作用の可能性もある薬ですので、医師の指示に従っての使用になります。

この他に、ニコチンパッチというものがあります。これは血中のニコチン濃度を低い状態で維持し、ニコチン切れの際のイライラを軽減するもので、その量を次第に減らしていき、最終的には使用しなくて済む状態を目指します。

こうした薬物による保険治療に関しては、以下のようなスケジュールで行われます。

初回
初診時には問診を行い、治療法のご説明の他、ニコチン依存度、喫煙の状況、禁煙の関心度などをチェックいたします。また、呼気中(吐き出す息)の一酸化炭素濃度の測定、禁煙開始日の決定と「禁煙誓約書」へのサインをお願いします。さらに次回診察日の決定を行い、治療のための禁煙補助薬の処方を致します。
2回目
初回から2週目に再診していただき、喫煙状況の問診をさせていただきます。呼気中の一酸化炭素の測定を行い、禁煙補助薬の追加処方をいたします。
3回目・4回目
4週目、8週目に再診していただき、呼気中の一酸化炭素の測定とともに、出現した離脱症状の確認や対処法などのカウンセリングや治療を行います。
5回目
12週目の再診が最終回となり、治療終了となります。禁煙に成功していれば、そのまま禁煙を継続するための取り組みなどをアドバイスいたします。

※保険で認められている通院回数は、初診を含めて計5回、期間は約3か月となっています。

ニコチン依存への薬による治療と並行し、精神的な依存に関しては、医師やスタッフが一人一人の患者様と丁寧にご相談しながら、環境の改善や生活習慣の見直しを図り、また行動パターンの変容などにも取り組みながら、禁煙の成功を一緒に目指していきます。本気で禁煙をお考えの方は、一度ご相談ください。