呼吸器内科について

鼻・口(喉)から気管・気管支といった気道を通じ、肺へと続くのが呼吸器系と呼ばれる部分です。当院の呼吸器内科は、これらに関連する症状について、急性、慢性に関わらず、診療を行っています。高齢化社会に伴う加齢や喫煙などの生活習慣によって、呼吸器疾患で悩む患者様も多くいらっしゃいます。咳や痰、息切れ、胸の痛みなどの症状に不安のある方は、当院にご相談ください。

呼吸器内科が扱う急性疾患としては、風邪と思われる症状やインフルエンザ、新型コロナウィルスなどの感染症、肺炎、扁桃炎、咽頭炎、気管支炎などがあります。また慢性疾患としては、気管支喘息や肺気腫、間質性肺炎、COPD(慢性閉塞性肺疾患)といったものがあります。さらに禁煙治療や睡眠時無呼吸症候群治療、在宅酸素療法も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

以下のような症状でご不安の場合、呼吸器疾患の可能性がありますのでご相談ください。

呼吸器系症状のイメージ
  • 咳や痰の症状がある
  • 熱が出た、あるいは微熱が続いている
  • くしゃみ・鼻水・鼻づまりがある
  • 喉が痛む
  • 胸が痛む
  • 血痰が出た
  • 息切れがする
  • 呼吸が苦しい
  • 呼吸をする際、ヒューヒュー、ゼーゼーという音がする
  • エックス線(レントゲン)検査で異常を指摘された
  • 禁煙したいが、なかなかできない
  • 家族にいびきを指摘された
  • など

呼吸器の病気には、主に以下のようなものがあります

ドクターイメージ
  • 風邪(感冒)
  • インフルエンザ
  • 咽頭炎・扁桃炎
  • 鼻炎
  • 副鼻腔炎
  • 気管支炎
  • 肺炎
  • 胸膜炎
  • 気管支喘息
  • 咳喘息
  • アトピー咳嗽
  • 百日咳
  • 気管支拡張症
  • 気胸
  • 膿胸
  • サルコイドーシス
  • マイコプラズマ
  • 肺がん
  • じん肺
  • 肺塞栓症(エコノミークラス症候群)
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  • 肺結核
  • 肺気腫
  • 肺水腫
  • 肺真菌症
  • 非結核性抗酸菌症
  • 好酸球性肺炎
  • 放射線肺炎
  • 間質性肺炎
  • アレルギー性鼻炎(花粉症)
  • 睡眠時無呼吸症候群
  • ニコチン依存症
  • など

気管支喘息

気管支喘息は一般的に喘息と呼ばれる病気で、気管支(気道)が慢性的に炎症を起こし、様々な症状を呈するものです。発作を起こすと呼吸時にヒューヒュー、ゼーゼーという音(喘鳴/ぜんめい)がみられるのが一つの特徴となっています。さらに咳が止まらず夜、目が覚めてしまうこともあります。より重い発作を起こすと呼吸困難に陥って、命に関わる場合もある、注意すべき疾患です。

喘息では炎症によって気管支の粘膜に赤く腫れた状態が続き、内側が狭くなります(気道狭窄)。すると少しの刺激でも過敏に反応するようになり、さらに狭くなって発作が起こります。炎症が起きる原因としては、ホコリやダニ、ペットの毛などのハウスダストをアレルゲンとするアレルギー反応や、ウイルス感染、タバコ、ストレスなどによる刺激が考えられています。

アレルギーを原因とする喘息は、小児期に発症しやすいと言われており、アトピー素因を持っていると、そのリスクが高まると考えられています。なるべくハウスダストを遠ざけるよう、こまめな掃除を心がけ、常に周囲を清潔にしておくことが大切になります。

また、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染症にかかり、気管支に起こった炎症が悪化して、喘息になってしまう場合もありますし、タバコやアルコール、さらにはストレスの刺激も、喘息の発作を引き起こす原因となることが知られています。

以下のようなとき、喘息症状が起きやすいと考えられています。

気管支喘息のイメージ
  • 夜間から早朝にかけて
  • 季節の変わり目等、寒暖差が激しい時
  • 雨や曇りの日、天気が変わりやすい日(気圧の変化が大きい日)
  • 疲労がたまっている時
  • 風邪をひいた時
  • タバコの煙を吸った時
  • 強い匂いなどの刺激があった時
  • アルコールを飲んだ時
  • など

こうした喘息の症状を治療せずに放置しておくと、気道がさらに狭くなって発作の頻度が高まったり、より重い症状が出るようになったりします。発作を起こすと、それにより気管支の壁が厚く硬くなり(リモデリングともいいます)、さらに発作が起きやすく、難治化するという悪循環に陥ります。喘息が疑われる場合は、お早目のご受診をお勧めします。

喘息の治療では、発作時の喘息症状を抑えることに加え、発作症状が無い時も(無症状でも)気管支で慢性的に炎症が起こっていますので、継続して病状をコントロールしていく治療が大切になります。発作が起きてしまった場合には、発作治療薬として気管支拡張作用がある薬剤や、さらに重症化してしまった場合はステロイドの全身投与、アドレナリン皮下注射が行われる場合もあります。発作が収まらない場合は、救急車を呼ぶ必要があります。

喘息では気道が過敏になっており、慢性的に発作を起こしやすくなっていますので、長期にわたって管理していく必要があります。長期管理薬としては、気道の炎症を抑えるステロイド吸入薬や、内服薬として炎症を抑えるもの、気道を拡張するものなどを使用していきます。

喘息は完治するのがなかなか難しい病気で、発作症状を起こさず、気管支のリモデリングを呼び込まないようにすることで、普通の日常生活を送れるようにすることが一つの目標となります。長引く咳でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)

慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)は、かつて慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。有害物質を長期的にわたり吸入していくことで肺に持続的な炎症を起こし、肺機能を低下させるもので、約9割がタバコの煙が原因と考えられており、喫煙習慣による生活習慣病とも言えます。

有害物質を長期に吸入していると、肺に持続的な炎症が起こります。すると咳や痰が生じ、気管支も次第に細くなっていきます。これが慢性気管支炎です。さらに気管支の奥にある肺胞と呼ばれるブドウの房状の組織が破壊されると、酸素の取り込みや二酸化炭素を排出する機能が低下します。これが肺気腫で、これらの状態がCOPDと呼ばれるものです。

当初は息切れ、咳、痰などの症状ですが、COPDが続いていると、次第に肺の機能は低下し、呼吸不全に至ります。喫煙習慣がある人の15~20%がCOPDを発症するとされており、一度肺気腫などの状態になってしまうと、治療をしても肺は元に戻りません。なるべく早めに治療を開始することが必要な病気と言えるでしょう。

慢性の咳や痰、労作時呼吸困難(体を動かしたときに息苦しくなる)が見られ、喫煙歴が長い場合、COPDが疑われます。診断の確定には、気流閉塞の有無を確認するスパイロメトリー(呼吸機能検査)を行い、さらに胸部X線、胸部CTによる画像検査も行います。スパイロメトリーやCT検査が必要と判断した場合は、当院ではすぐに検査を行うことが可能です。

COPDの治療では、まず喫煙者の方は禁煙をします。禁煙は病状の進行を遅らせたり合併症を予防するために、最も重要となります。その後、薬物療法として抗コリン薬・β2刺激薬・テオフィリン薬などの気管支拡張薬が中心になりますが、効果や副作用の面から吸入薬(長時間作用型抗コリン薬や長時間作用型β刺激薬)が推奨されています。気流閉塞が重症の場合は吸入ステロイド薬による薬物療法を行います。そのほかにも呼吸リハビリテーションや在宅酸素療法も併せて行う場合もあります。また肺炎を併発すると重篤なものになる可能性が高いため、インフルエンザや肺炎球菌のワクチンを接種しておくことをお勧めします。COPDでは症状の軽減に加え、QOL(生活の質)の改善や運動耐容能の改善が重要な治療目標になります。

肺炎

肺炎は、がんや心疾患、脳卒中に続いて常に死亡原因の上位に位置している病気です。文字通り肺に炎症を起こすもので、炎症が発生すると発熱や咳、痰、胸痛などの症状が見られるようになります。重症化すると呼吸困難に至ってしまい、命に関わる場合があります。

特に高齢者、肺気腫などの呼吸器疾患の既往症のある方、心疾患や腎疾患のある方、また糖尿病やがんの治療中など何らかの理由で免疫力が落ちている方などは、肺炎を併発しないよう、日頃から細心の注意を払うことが重要です。

肺に炎症を起こす最も多い原因として、細菌やウイルスへの感染が挙げられます。肺炎球菌や黄色ブドウ球菌、インフルエンザ菌、最近では新型コロナウィルスなどが代表的なものとなっています。この他の原因としては、アレルギー、自己免疫疾患や、高齢者における誤嚥性肺炎などがあります。

肺炎の診断としては、胸部エックス線(レントゲン)検査や胸部CT検査などの画像検査、血液検査などを行います。肺炎を起こすと、画像検査では擦りガラスのように白く影が現れるため、それを確認します。また血液検査では、炎症によって増加する白血球や、CRPというたんぱく質の数値を調べます。

肺炎の治療は原因によって異なりますが、細菌が原因の場合は抗菌薬を、ウイルスが原因で特効薬があれば抗ウイルス薬を投与します。脱水症状や著しい血中酸素濃度の低下を引き起こしている場合、ショック状態にあるときなどは入院が必要で、さらに症状が悪化した場合は酸素吸入器や人工呼吸器の装着が必要になってしまいます。

当院では入院による検査や加療が必要と判断した場合は、連携する病院を紹介いたします。とくに高齢者の方は、日ごろから予防接種を受けるなど、肺炎への備えをしておくことが大切です。

肺結核

肺結核とは、結核菌という細菌により起こる肺の感染症で、古くは日本の「国民病」とも言われ、1950年以前には日本人の死因のトップで、「不治の病」とも言われた病気です。その後、有効な治療薬が開発され、また検診で患者数は激減し、「薬で治る病気」として認知されるようになりました。

しかし、現在でも年間約2万人もの人が肺結核を発症しており、これは欧米諸国に比べても多い数字となっています。世界的に見ても、世界の人口の約3分の1が感染していると考えられており、注意が必要な感染症と言えるでしょう。

肺結核は飛沫核感染するもので、結核に罹った人の咳などで結核菌に感染します。ただし、感染しても発症することは少なく、5~10%と考えられています。これはもともとの免疫力によって結核菌が抑え込まれ、発病しないと考えられています。

ただし発症しなくても、そのまま結核菌が体内に残っている場合があり、高齢になって免疫力が落ちたり、他の病気で免疫を抑える薬を使用したり、またAIDSになったりした際に、潜んでいた結核菌により、発症することがあります。

肺結核のイメージ
(初期の症状)
咳(3週間以上続く)
発熱
寝汗
倦怠感
食欲不振
体重減少 など
(以下は進行した場合)
息苦しさ
血痰
喀血
胸部痛 など

結核は初期の症状が軽く、インフルエンザや一般的な肺炎と比べて、ゆっくりと進行するため、なかなか気づかないことが多く、診断時にはかなり進行している場合がありますので注意が必要です。

肺結核の検査では、胸部エックス線(レントゲン)検査や胸部CT検査などの画像検査、および痰の中に結核菌がいないか痰を調べる喀痰検査が行われます。また、血液検査で結核菌感染の有無を知る一つの検査法でT-SPOT・QFTというインターフェロンγ遊離試験もあり、保険適応されております。その結果、肺結核と診断された場合、菌を排出し、他の人に感染させる可能性のある期間は、隔離病棟での入院治療が必要になります(痰から結核菌が排出していなければ隔離の必要はありません)。

治療は抗結核薬を用います。抗結核薬にはイソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトール、ストレプトマイシンなどがあり、これらの中から3~4種類を組み合わせて使用する、多剤併用療法が基本となります。治療期間は約6~9カ月とされています。

現在、結核はきちんと治療すれば、治る病気です。一方、治療中に症状が消えることがあり、自己判断で服薬を止めてしまうと、薬が効かない耐性菌の出現につながる危険があります。そうした菌による肺結核は治癒率が低く、治癒したとしても再発率が高いと言われていますので、しっかりと最後まで薬を服用することが必要です。場合によっては医師や看護師、家族の目の前で内服してもらう、直接服薬確認治療(DOTS/Directly Observed Treatment Short-Course)を行う場合もあります。

非定型抗酸菌症(非結核性抗酸菌症)

非定型抗酸菌症とは、現在、非結核性抗酸菌症(NTM症/Non Tuberculous Mycobacteria)とも呼ばれるものです。抗酸菌には結核菌も含まれますが、結核菌以外の抗酸菌によって引き起こされた病気をこう呼びます。これは従来、結核菌によるものを「定型」と考えていたことによります。

非結核性抗酸菌は、100種類以上の菌種が含まれています。この中で人に感染する代表的なものは、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)とマイコバクテリウム・イントラセルラー(Mycobacterium intracellulare)です。この二つは性質が似ているため、ひとくくりにしてMAC(Mycobacterium Avium Complex)と呼び、MACが肺に感染して発症する病気を肺MAC症と呼びます。NTM症の7~8割は、この二つの菌によるものです。この他にはマイコバクテリウム・カンサシ(Mycobacterium kansasii)という菌が原因となる肺カンサシ症があります。

多くの場合、これらの菌を吸い込んだとしても感染することはありませんが、肺に持病(気管支喘息やCOPDなど)がある人、ステロイドの内服治療を受けている人、重い肺炎にかかったことがある人などは、感染・発症しやすいと考えられています。しかし、最近では過去に基礎疾患のない中年以降の女性の増加が顕著で、なぜ女性に多いのかははっきりとわかっていません。

NTM症の症状は結核と似ている部分が多く、以下のような症状が現れます。(自覚症状がなく、健診や他の病気の検査で見つかる場合もあります)

非定型抗酸菌症(非結核性抗酸菌症)のイメージ
  • 黄色い痰
  • 血痰
  • 発熱
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 倦怠感 など

病状が進行した場合、また、病勢の強い人では以下のような症状が出ることもあります。

  • 高熱
  • 大量の寝汗
  • 喀血
  • 息切れ、
  • 呼吸困難 など

非結核性抗酸菌は、基本的には結核菌のように人から人へと感染するものではなく、水や土など菌が生息する環境から人に感染すると考えられています。生息する環境としては、池や沼などの湿地帯、家畜、田畑や庭の土、さらには浴室や水道水、加湿器などにも生息の可能性があります。NTM症を予防するためには、特に家庭内での対策が重要で、各種タンクの水をこまめに取り換えたり、浴槽やシャワーヘッドを清潔にしたり、給湯の温度を高くしたり(55℃以上)、鉢植えなどの土が舞い上がらないようにしたりすることが大切です。

NTM症が疑われる場合、検査としては肺結核同様、胸部エックス線(レントゲン)検査や胸部CT検査などの画像検査、および痰の中に非結核性抗酸菌がいないかを調べる喀痰検査が行われます。CT検査では菌の種類によって異常個所や影の見え方が異なるため、菌の種類をある程度推測することが可能です。さらに補助的検査として血液検査(MAC抗体)も行います。

NTM症の治療としては、病変が限局している場合は手術を行うこともありますが、通常は複数の抗菌薬を組み合わせて使用します(使用する抗菌薬は感染した菌によって決定していきます)。中には効果が現れにくいものもあり、結核の治療よりも年単位になるなど長期にわたって使用していく場合もあります。結核と違い、人から人へは感染しませんし、経過の長い病気で自然軽快することもありますので、軽症のときには経過観察のみ行うこともよくあります。いずれにしてもこの病気と長くお付き合いしていこうというゆとりを持って過ごすことが大事だと思います。

間質性肺炎

通常肺炎というと、気管支や肺胞など空気の通り道に炎症か起こることが多いのですが、間質性肺炎は、肺胞の周りや肺胞と肺胞の間にあって固定し支えている「間質」という組織が炎症を起こした状態のものを言います。

間質性肺炎の多くは直接的な原因が明らかになっておらず、遺伝的要因や環境的要因が複雑に関与しているのではないかと考えられています。薬剤、放射線、膠原病、関節リウマチ、塵肺、過敏性肺臓炎などにより引き起こされる場合もありますが、特に原因か明らかでないものは、特発性間質性肺炎と言われ、難病指定疾患となっています。

間質の部分の炎症が進むと、肺胞を支える肺胞壁が厚くなり、肺胞自体の形もいびつになって肺全体が固くなっていきます。すると肺は膨らみづらく、動きが悪くなり、肺活量が落ちて酸素の吸収効率も悪化します。これにより、息苦しさや咳などの症状が出るようになります。この時、痰が絡まない「空咳」であるのが特発性間質性肺炎の症状の特徴と言われています。また酸素不足を原因として、手足の指の末端が太鼓の「ばち」のように丸みを帯びてくる、「ばち指」が見られることもあります。

炎症が進行すると、肺はさらに縮んでいき、一部は線維化して固くなり、その部分は肺としての機能を果たせなくなります。肺全体の機能はさらに低下し、血中の酸素も不足していきます。それまでは労作時に息苦しかったものが、安静時にも息苦しさを感じるようになり、日常生活にも支障をきたす呼吸不全となってしまう場合もあります。通常、息切れなどの症状から呼吸不全に陥るまでには、数年かかると考えられています。

ただし間質性肺炎は、種類や患者様によって進行の状況が異なり、最悪の場合、慢性の状態であっても、急性増悪となって命に関わることもあります。風邪やインフルエンザ等の呼吸器疾患がその引き金となることもありますので、注意が必要です。

間質性肺炎の検査では視診として「ばち指」の有無や、聴診にて肺の捻髪音(間質性肺炎で特徴的な、髪をつまんで捻った時に出るパチパチという音に似たもの)の有無を調べ、さらにX線やCTなどの画像診断を行い、肺が障害されている状態を確認します。また、血液検査ではKL-6やSP-D、SP-A、LDHなどの項目を確認することで、肺へのダメージの度合いを調べるとともに、抗核抗体やIgEなど間質性肺炎の原因やそれ以外の病気である可能性も判断します。さらに病気の進行度合いを調べる呼吸機能検査や、気管支鏡を用いて生検などを行う場合もあります。

治療としては、まず薬物治療が考えられます。有効性が認められているものとしては、免疫を抑制することで炎症を抑える副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤、さらに線維化してしまう状態に対してはピルフェニドンやニンテダニブといった抗線維化剤があります。これらは病気の型によって効果に違いがあり、さらに副作用も考えられますので、患者様ひとりひとりを慎重に診断し、薬剤の使用の可否や使用法などを決定していきます。

この他、咳に対する対症療法としての薬剤を使用する場合もありますし、また呼吸不全によって日常生活に支障をきたしている場合は、在宅酸素療法を導入することも考えられます。当院では、間質性肺炎と診断し、気管支鏡検査や薬剤治療が必要であると判断されたときは連携医療機関に速やかにご紹介いたします。

肺がん

現在日本では、2人に1人ががんにかかると言われています。その中で死亡数が最も多いのが肺がんで、5年生存率は約20%と低く、治療が難しいがんのひとつです。

通常、肺がんは肺自体から発生したもの(原発性)を指します(肺以外で発生し、肺に転移したものは転移性肺がんと言います)。肺がんの原因の70%は喫煙と言われており、本人がタバコを吸っていなくとも、受動喫煙も肺がんの原因となります。タバコには数十種類の発がん性物質が含まれています。常にこれらの物質が肺や気管支に刺激を与えることで、細胞に遺伝子変異が起こり、これが積み重なることでがん化すると考えられています。

タバコ以外の原因としては、環境、食生活、放射能、薬品などが考えられます。たとえば、アスベスト、ラドン、ヒ素、クロロメチルエタノール、ニッケルなどの化学物質に長期間さらされることによって、肺がんが引き起こされることも知られています。そのため、職場でこれらを扱っていたり、これらの物質による大気汚染がある地域に居住していると、肺がんの発症率が高くなる場合があります。

肺がんの初期には症状を自覚することは殆どなく、咳や痰などは風邪や感染症とも共通する症状です。しかし、がんの進行とともに息切れや倦怠感が強まり、血痰や体重減少などの症状が出てきます。そうした場合は早期に検査をすることをお勧めします。

肺がんの検査としては、問診にて喫煙歴などの生活習慣を伺い、さらにエックス線(レントゲン)やCTによる画像検査や、痰を採取してがん細胞の有無を調べる喀痰検査などを行います。これらの検査で肺がんが強く疑われる場合は、さらに内視鏡を口や鼻から挿入して、気管支の様子を観察し、同時に肺の組織を採取してがん細胞の有無を調べる気管支カメラ、皮膚の上から細い針を病変へ突き刺して、細胞を採取する経皮肺生検などにより、診断を確定させます。

肺がんの治療では手術・化学療法(抗がん剤治療)・放射線治療の3つが主なものになります。がんがどれくらい進行しているか(ステージ)、また全身状態を踏まえて最も適した治療法を選択していきます。早期であれば手術が選択されますが、進行して手術が難しい場合は、がんを縮小させるための抗がん剤治療(化学療法)、放射線療法などが行われます。一部の局所進行肺がんに対しては、放射線治療と薬物療法を行ったのちに手術をすること(集学的治療)もあります。このほか近年では、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの治療薬も用いられるようになっています。

当院では、肺がん確定のための検査が必要と判断した場合、また実際の治療に関しては、連携する医療機関を速やかにご紹介し、スムーズに治療が受けられる環境を整えてまいります。

在宅酸素療法

慢性気管支炎や肺気腫(COPD)、間質性肺炎、結核の後遺症などの肺疾患で、慢性的に呼吸に障害のある場合、酸素を十分に体に取り込めなくなります。体の様々な臓器や細胞に供給されるべき酸素濃度が持続的に低下していると、それら生命維持のために重要な臓器に負担がかかり、機能低下を引き起こします。すると心不全や脳卒中などの命に関わる合併症が生じる危険性が高まります。

そうした酸素不足の症状を改善するのが、「HOT(ホット)」(Home Oxygen Therapy)とも呼ばれる、在宅酸素療法です。これは、患者様のご自宅において、酸素濃縮装置や酸素ボンベを用い、通常よりも濃度の高い酸素を供給することで、体が十分に酸素を取り込めるようにし、肺や心臓への負担を軽減するものです。

これにより、重い肺疾患や心疾患を持っている患者様でも、息切れなど呼吸器の症状の改善や、睡眠の質の向上が望めます。またHOTでは外出用の機器もありますので、行動範囲も広くなるなど、生活の質を向上し、毎日を元気で生き生きと暮らせるようになり、寿命を延ばしていくことも期待されます。

在宅酸素療法では、まず血液検査やパルスオキシメーターによる検査、歩行テストなどを行って、患者様それぞれで必要な1日の酸素量を測定します。その上で患者様の生活状態や環境に合わせて使用する機種を決定し、レンタルの手配を致します。治療開始後も、月一回以上の定期検診が必要で、その際、機器のトラブルがないことを確認し、酸素の投与量が適切かどうかチェックします。HOTは保険適用ともなりますので、お気軽にご相談ください。